BayanMix(Баян Микс)
2013年の初夏頃だったか、たてつづけにいろいろな人のチャルダッシュの演奏を聴く機会があり、海外の人の演奏も聴いてみたくなってYoutubeを漁っていた時期があった。
そんな中で出会ったのがこの動画である。
ぎゃっ!
と思わず声が出た。
ナニゴトなの、その腕は!?アコーディオン(バヤンですが。)弾くのにそれって必要?!
音楽性云々よりも、まずは右側の男性の二の腕に目が釘付け!
ファッションもかなり、ハードロックのテイストで、蛇腹弾きにしては奇抜。
しかも似合ってるし。
ともあれ、バリバリ動きまくり弾きまくるこの二人を観てるとなんだかスカッとするので、深夜にビールを飲みながら彼らの動画を見るのが初夏の私の楽しみになった。
だいたい同じ体格なので見た目のバランスもよいことに加え、キャラクターがはっきり違っていてコンビとしての対比も面白い。
どういう二人なのだろうか?
情報を求めて検索したものの、日本語の情報は皆無。
とりあえず公式サイトがみつかったが、英語とロシア語のみ。
わかったのは、ロシアのグループであることだけ。
それでも根性で検索を繰り返し、Google翻訳の力も大いに借りて、少しずつ正体がわかってきた。 (半年以上かかりましたぜ!)
英語、日本語の情報はほとんどないけど、ロシア語ならば雑誌記事やらインタビュー、テレビ出演時の動画などなどが山ほど出てくるので、ロシアではそれなりの知名度があるらしい。
金髪メガネの方がセルゲイ・ヴォイテンコ(ロシア読みではヴァイテンカ)、短髪マッチョの方がドミトリー・フラムコフという。6歳違い。セルゲイが年上。
ロシアのサマラ州出身で、サマラの大学で同じ教授の門下でバヤンを学んでいた仲。日本風に言えば「兄弟弟子」同士ってとこ?
二人とも「ヴィルトゥオーゾ」と称される超絶技巧の演奏家であるが、演奏以外でもテレビに出たり、映画に出たりなど、タレント的な仕事もしている模様。
とはいえ、ロシアではバヤンはどちらかというと民族楽器、時代遅れの楽器というイメージ。バヤンをこよなく愛する二人は、バヤンをもっと文化として盛り上げ、若い演奏者を増やしたいという想いを持っており、セルゲイは2002年から「Viva!Bayan」というコンクール兼イベントをオーガナイズ。若手奏者を育てて海外のアコーディオンコンクールに送り出すなどの活動を開始。そんな流れの中から出てきたのが、このBayanmixだったようだ。結成は2005年。
バヤンの既存のイメージを打破し「かっこいい楽器」としてイメージを再構築して、打ち込み+バヤンデュオという様式を、ひとつの演奏フォーマット(若手奏者が目指す演奏スタイルの1ジャンルとして)として確立したいという意図があったみたいです。
CDやDVDなどの音源が一般発売されていないのは、そういった「バヤンの宣伝マン」的な位置づけのユニットだからなのかなあ。本人たちをアーチストとして売りたいというのとはちょっと違うんでしょうね。立ち位置はあくまで「演奏家」なのではないかと。
(ああ、でも最近、「No.1」というアルバムだけ、iTunesでダウンロードできるようになりました。1350円なので日本の皆さん、買いましょう!)
しかし、衣装から楽器、ステージの演出や照明にいたるまで、このトータルプロデュース感は二人だけの力というより、「プロジェクト」みたいな形でかなりの人とお金が動いてるんだろうなーと想像。
スタイルとしてインスパイアされたのはバネッサ・メイだったそうです。
なるほど!とハラオチするものが。 確かに、バネッサ・メイのスタイルを屈強なロシア人男性二人で、バヤンで・・・というコンセプトなら、こんな感じになるでしょう。
ちなみにバネッサ・メイはシンガポール出身のバイオリニスト。
荒川静香が「トゥーランドット」を使ったので日本でも一躍有名になったが、もっとも活躍していたのは90年代の半ば頃。
そういえば、90年代後半から2000年にかけて、こんなふうにクラシック楽器をポップスやロックにアレンジしてセクシーな服装で演奏したり、エンターティメントショー的に見せる「クロスオーバークラシック」というスタイルが一世を風靡した時期があった。
もしかしたらBayanmixもクロスオーバークラシックの一形態と言えるのかもね。
ところでBayanmixは楽器も印象的なのだが、特注のオリジナル楽器なのかと思ったら、キャバニョロにこういう楽器があるようだ。
デモ動画があったので貼っておく。
「Sunyaykin」というモデルらしい。いくらぐらいするんだろう?
2020年追記
バヤンミックスは初代の2人に代わり、2代目が活躍中です。