Remove Kebabの謎

日々、アコーディオンの情報をもとめてネットを徘徊している私のもとに、ある日こんな動画が流れてきた。

とってもコワモテの軍人2人が奏でるポルカである。

twitter上で発見したときはすでにこのようにループ加工されていて、この曲の一番軽快な部分だけ繰り返し流れるように編集されたものだったので、コワモテとポルカのギャップにただ単純に笑って観ていたのだが、だんだんこの男性の、とくにアコーディオンの人のただならない険しい顔つきが気になってきた。なんか、シャレにならない感じというのを直観したのだ。

 

便利なもので、紹介された動画はYouTube上にあったので、関連動画がたどれる。

いくつかたどっていくうちに、フル動画もすぐ発見でき、さらに英訳された字幕付きの動画を発見することとなる。下の動画がソレ↓

(不鮮明とはいえ、凄惨なシーンも映っているので苦手な人は注意!)

なんて歌ってるのか知りたかったので、画像を止めながら書き写してみた歌詞が以下です。

インチキ歌詞だったらイヤなので、セルビア語字幕版の動画も探して、歌詞をランダムに抜書きしてGoogle翻訳で確認した範囲では、一応ちゃんと訳されてるみたいだった。

ということで、こういうことが歌われていることが判明。

From Bihac to Petrovac town

to Petrovac town

the entire Serbian land attacked

the entire land attacked

 

※Karadzic will lead The Serbs

will lead The Serbs

Show them that they are not afraid of anything

they are not afraid of anything

 

Croatian rascists,Croatian rascists are awoken

Don't touch our country

our country

 

※くりかえし

 

From Krajina,the Wolves are coming

the Wolves are coming

be afraid,fascists and turks

fascists and turks

 

※くりかえし

 

In defence of the Serbian People

defence of the Serbian People

We fight,glory to our freedom

glory to our freedom

 

※くりかえし

私の語学力ではきれいに日本語訳できそうにないので、そこは読んでいただく方に委ねたいところだけど、「Karadzic」、つまり「ラドヴァン・カラジッチ」を讃え、セルビア人の戦意を高揚する内容の歌だということがわかった。更に、トルコ人とクロアチア人に対しての敵意も歌われている。

 

ラドヴァン・カラジッチは、ボスニア紛争当時のセルビア人達の政治指導者で、ボスニア人やクロアチア人の大虐殺を指揮したといわれている人である。

この歌はその人を讃えているということになる。

さて、この動画、アコーディオンの男性の顔のインパクトが大きいせいか、一時期ネット上でパロディのネタにされた時期があったようだ。(「Dat Face Soldier」と呼ばれていたみたい。)

そのことをまとめたサイトがあった。

 

http://knowyourmeme.com/memes/serbia-strong-remove-kebab

 

ここの記述によると、この動画が初めてアップロードされたのは2008年。

作られた時期は1992年~1996年の間と推定されているが、詳しいことはわからないみたい。

ただ、ここにアコーディオンを弾いている男性だけ、名前が書いてあった。

この記事を信用するならば、彼の名は「Novislav Đajić」。セルビア語で読めないので、検索したところ「ノヴィスラヴ・ジャイッチ」と読むらしきことがわかったので、日本語情報を求めてカタカナでさらに検索。

1件目にひっかかってきたのはウィキペディアの「フォチャの虐殺」という記事だった。

この人の裁判の判決の中で、フォチャでの大量虐殺が「ジェノサイド」として認定された、と書かれている。

このコワモテのアコーディオン弾きがもし本当に「ノヴィスラヴ・ジャイッチ」であるならば、ジェノサイドに関わった・・・少なくとも、加害者側として虐殺の現場にいた人間ということになる。

上記の作成推定時期が合っているならば、この演奏動画はまさにその渦中の時期に撮られたものである可能性がある。

なのでこれは、もしかして人殺しかもしれない人間の演奏である、ということである。

 

う、調べていて、鳥肌が立ってきてしまった・・・。

まあ、ネット情報だから、完璧にウラが取れてるわけではないけれど・・・。

 

(ノヴィスラヴ・ジャイッチについてはこんな情報も発見

「TRIAL・・・Track Impunity Always」という、スイスにあるNGO団体によるもの。(国際犯罪を追跡する団体らしい。)

写真を見ると、同一人物とは思えないのだがどうなんだろうか・・・。

 TRIALによるNovislav Đajićのプロファイル

まだちょっと、同一人物かどうかということについては、私は懐疑的です。)

 

もっとこの動画に関しては知りたいことがある。

 

・誰が何のために撮ったのか?

・撮影地はどこなのか?

・そもそもネットで公開するつもりはあったのか?

ノヴィスラヴ・ジャイッチを含め、映っているメンバーはその後どうなったのか?

・これはオリジナル曲なのか、原曲があるのか?

・繰り返し使われている「紙コップで何かを飲むカラジッチの映像」に意味はあるのか?

 

などなど、興味はつきないが、これ以上どうやって調べたらいいのかわからない・・・。

 

参考までに最初にアップロードされたとされる原点の動画も貼っておこう。

いうなればこれが「原本」である。

 

参考までに動画をアップロードした人のチャンネルがこちら↓

https://www.youtube.com/user/ARHIVISTA/featured

 

 

ネットでは「Serbia Strong / Remove Kebab」というタイトルで流布されているけれど、もとは「Radovan Karadzic Haag bluz」。セルビアの国名も入っていないし、トルコ人の蔑称である「kebab」って言葉も入ってない。インターネットで拡散される中で、より過激でキャッチ―なタイトルにされてしまったのかもしれない、と考えるとそのことも何かやりきれない。

YouTube上には、これのパロディ動画がたくさんある。更にこの歌を楽しそうに合唱している人たちのプライベート映像もけっこうある。

歌詞をわかっててやっているならコワイし、わからないままにノリだけでやっているのもそれはそれでコワイ。「ネタ化」という現象の怖さ、愚かさ。

  

ポルカで戦意高揚できるものなのか?マーチならわかるけど・・・・。

と思ってたけれど、これだけ脳内ループする力のある音楽は他にないかもしれない。

その上、明るくマヌケな感じがある分、罪悪感を薄めてくれる。

私自身にしても、こうしてさまざまな陰惨なことが分かったというのに、頭の中からは、この軽快なポルカのメロディが消えなくて困っている。

 

ホントは怖い音楽なんじゃないか、ポルカって。